カウントダウン(ファイナル)
メルセデスベンツC180に関する情報はこちらで提供しています。
いよいよこのサイトも一区切りを迎えることになりました。ディーラーの方から最終の納車準備ができたとの連絡があり,A160(代車)に乗って引き取りに向かいました。
次に乗ることになったのはメルセデスベンツC180コンプレッサーステーションワゴンです。
注文後約2週間を経て,登録前の実車確認(オプションなどのチェック)を済ませて納車と相成りました。これからまた,新しい車との付き合いが始まります。
自動車も工業製品である以上,企画や設計や製造や流通や販売の不手際による不具合はある程度の確率で必ず発生するものです。しかし,購入者の立場にたてば,自分のものになった1台はできるだけ不具合のない完璧なものであってほしいと願うのもまた自然なことでしょう。ユーザーの思いと現実との間には埋めようのない溝が存在するわけです。とくに最近では,コンピュータネットワークの発達に伴って製品の不具合情報が共有されやすくなり,さらにユーザーズグループなどの横のつながりによって,自分の車と他人の車を比較することが容易におこなえるようになってきました。
こういった変化はユーザーの車に対する認識を深めるとともに,ディーラーやメーカーがいち早く自社製品の不具合を察知して対策を進めやすくなるといったメリットをもたらしました。しかし,一方でこれまで「なんかおかしいな」といったレベルで留まっていた車の品質に対する疑問を具体化かつ表面化させ,さらに横比較によってそれが深刻化することで大きなトラブルを引き起こすきっかけにもなるという負の側面をも有しています。
これまで当サイトでは車の不具合情報の公開には慎重な態度をとってきました。情報が不特定多数の間で一人歩きして「クレーマー」を生むきっかけになるかもしれないという懸念が,それを共有することによる自動車生活の充実感の向上という利点を上回っていると考えていたのがひとつの大きな理由です。しかし,ザフィーラを手放すにあたって,これまでに発生した問題をまとめて記録しておくことにはそれなりのメリットもあるかもしれないと考えるようにもなりました。いま挙げた懸念が払拭されたわけではありませんが,それは情報の受け手の良心に任せて,こちらは出せる情報をきちんと出した方がよいだろうと判断したわけです。
そういうわけで,今回は1年半の間におこった不具合をまとめて報告することにしましょう。「まとめる」のが主旨ですので,これまでに報告した内容と一部重複するものもあります。
問題:アンテナジョイントの曲がり
ディーラーオプションで取り付けたアンテナの折り畳みを可能にするジョイントが,納車時からやや左に曲がっていました。立てている時はいいのですが,畳むと斜め下を向いてしまいました。
対策:クレーム扱いで交換
問題:テールゲートのズレ
テールゲート全体がやや右上にずれていました。機能的には問題なかったのですが,後からみたドライバーにに「事故車みたいだ」といわれたこともあります。
対策:そのまま放置
問題:シートクッション表皮の裂け
納車後2週間ほどして気が付きました。助手席シートクッションの下部が2センチほど裂けていました。
対策:クレーム扱いでシート表皮交換
問題:運転席アームレストジョイントの破損
納車後1ヶ月半ほどで発生しました。写真の位置からアームレストがまったく動かなくなってしまいました。
対策:クレーム扱いでジョイントのみ交換
問題:バンパー塗装の剥がれ
納車後1ヶ月半ほどで発生しました。高圧洗車機を使用していたところ,フロントバンパーの塗装がメリメリと剥がれてしまいました。これ以降,洗車機の使用には気を付けるようになりました。サービスマンの話では「下処理にも問題があったのでは?」ということです。
対策:クレーム扱いでバンパー再塗装
問題:(1)キーホールイルミネーション脱落 (2)キースイッチの戻り不良
キー回りで2つ不具合がありました。まず,ディーラーオプションで取り付けたイルミネーションが脱落して宙ぶらりんになってしまいました。さらに,こちらの方が深刻なのですが,キースイッチをエンジン始動位置から戻すスプリングの力が強すぎて,始動後にON位置を通り越して戻りすぎてしまうというトラブルが発生しました。この場合,電動ファンや空調が作動しないので,オーバーヒートを引き起こすおそれがあります。幸い,私の場合は,エアコンパネルが操作不能になったのですぐに気が付きました。発生した場合でも,いったんエンジンを切って再始動すればたいてい元に戻ります。
対策:(1)脱落しないよう再固定 (2)戻りすぎないようにスプリングを加工
問題:(1)ワイパーの拭き取り不良(左) (2)エンジンから「カラカラ」音発生(右)
1年点検のところで報告したものです。いずれも対策部品が出ています。
対策:(1)ワイパーリンケージを対策品に無料交換 (2),「オルタネータワンウェイプーリー」と「リブドベルトテンショナー」を対策品に無料交換
問題:ハイマウントストップランプのズレ
これも1年点検のところで報告済みです。固定するツメが折れていたそうです。
対策:クレーム扱いでランプAssyを交換
問題:シートまわりプラスチック部品の破損
これも簡単に報告したものです。納車後3ヶ月ほどしてサードシートの固定部分(左)と助手席シートバックの根元部分(右)のブラスチック部品がこわれていたのに気が付きました。
対策:クレーム扱いで破損部品を交換
問題:エンジンチェックランプが点灯
納車後1年近く経過してからのことです。それまでほぼ毎日乗っていたのですが,年末年始をはさんだので2週間ほど放置していた後に発生しました。エンジン始動後にメーターパネルのエンジンチェックランプが点灯したままになりました。そのままヤナセに持ち込んだところ,「イグニッションモジュールより信号が来ていない」とテスターに表示されたとのことでした。同様の不具合はこれまでにも発生しているらしく,エンジンECUのリセットおよびプログラム書き換えで対応したそうです。
対策:説明を参照
問題:ヘッドランプユニットのツメが破損
これは納車時からでした。左右ともヘッドランプ上部に何かが折れたあとがあります(左)。後日,他のザフィーラをみせてもらったところ,本来ついているはずのツメ(右,赤矢印)が破損していたことがわかりました。機能には問題なさそうだったので,1年くらい経ってから別件のついでに交換してもらいました。
対策:クレーム扱いでヘッドライトAssyを交換
……と,まとめてみると結構あるものですね。この中で走行に関わるトラブルに発展する可能性があったのは「キースイッチの戻り不良」と「エンジンチェックランプが点灯」の2件でした。その他の問題も含めてディーラーには結構通うことになりましたが,その都度サービスフロントには真摯に対応していただきました。「交換しろ,いや無理だ」などといった形でトラブルになったケースはなく,かえって車に対する理解を深めるきっかけにもなりました。
上へもどる下に書いた経緯のとおり,しばらくの間メルセデスベンツA160に乗っていました。せっかくの機会ですから,ともに生活して気がついたことを簡単に報告しておきましょう。
A160はいわゆる「Aクラス」の一番安価なグレードです。Aクラス自体がメルセデスベンツでもっとも安価なクラスに属しますので,A160は(日本で)最も安く販売されているメルセデスベンツということになります。ちなみに車両本体価格は225万円です。AクラスにはA160のほか,豪華装備版の「A160エレガンス」(250万円),ホイールベースを伸ばした「A160Lエレガンス」(265万円),1900ccエンジン搭載の「A190アバンギャルド」(295万円)の3車種が用意されています。
ドアを開けて一番最初に感じるのが,床が非常に高いことです。地面からも高い(緑の矢印)のですが,床自体が浮き上がった構造になっています(赤の矢印)。これに対応して,ドアのほうも内張りが上に寄せてあります。ドアハンドルが目いっぱい上に取り付けられているのがわかりますが,シートとの位置関係ではこれでようやく普通になります。
Aクラスは一見ミニバンのようです。したがって,ドライビングポジションもある程度ザフィーラのようなアップライトなものを期待するのですが,この床の高さによって見事に裏切られることになります。普通のセダン(というかスポーツカーに近い)の運転姿勢ををそのまま上に持ち上げたような感じだと考えてもらえればよいでしょう。高い床の上にペタンと座る感じです。全高の高い車の中で全高の低い車のような姿勢をとるわけですから,車両感覚にはやはり狂いが生じます。ザフィーラがこのあたり非常に自然なだけに違和感はぬぐえないところです。
こうなっているのには当然理由があって,企画の段階では,浮いた床下の部分に蓄電池や燃料電池ユニットを搭載することになっていたといわれています。Aクラスが登場した時には,先を見据えた合理的な設計としてこの発想が高く評価されていました。たいしたコストをかけずに新動力源に移行できるようになっていたわけですね。また,床が高くなったおかげで衝突安全性も向上(特に側面衝突)するというオマケもついていました。安全と環境保護という21世紀の課題に正面から取り組んだ製品としてAクラスは華々しいデビューを飾りました。
しかしこのことは,代替動力車の開発が予定通り進まなければ,Aクラスの床下には無駄な空間が残されたままになるということも意味していました。無駄になるだけならまだいいのですが,空っぽのままだと重心が上がって操縦性や乗り心地にマイナスの効果をもたらします。これが最悪の形であらわれたのが車線変更テストによる横転事件です。障害物を急ハンドルでよけて再度急ハンドルで元の車線に戻るというテストでひっくり返ってしまったAクラスの写真が大々的に掲載され,ダイムラーベンツは出荷をすべてストップして対策せざるを得なくなりました。このあたりの顛末はすでに様々なところで報道されていますので,ご存知の方も多いことと思います。Aクラスをベースにした燃料電池車の開発自体は進められているのですが,まだ大々的に売り出すにはいたっていないのも周知の通りです。
Aクラスのコンセプトは本当に先進的だったのか,それとも単に先走り過ぎていたのかを評価するのは難しいですし,とりあえずは当サイトの課題でもありません。ただ,当初の意図と現実の姿に若干のずれを生じてしまっていることは記憶しておいてもよいと思います。
床が高いことを除けば,Aクラスの使い勝手はそう悪くありません。全長が短いので5人乗り時の荷室は大きくはありませんが(左),シート全体を前に倒せばかなりのスペースが出現します(右中)。シートを倒すときには,ヘッドレストをアームレストに収納できるようになっています(右)。また,シート全体を取り外すこともできます。
後席床面も完全にフラットです。やはり後席のドアハンドルも目いっぱい上についています(左,赤矢印)。シートは小さめですが,ヘッドレストはきちんと正しい位置に調整できます(左,緑矢印)。後席シートベルトのバックルはきちんと収納できます(右)。
運転していて気が付いたのはワイパーです。ザフィーラと同じタイプで助手席側が上にくるタイプの対向式にもかかわらず,運転席側の拭き残しが非常に少なくなっています(赤線の部分まで拭けます)。このあたりはさすがという感じです。また,非常に小回りが効くのも印象的でした。最後にグイッと切れ込む感じは他のベンツとよく似ています。FFは小回りが効かないというわけではないんですね。
床が高いことから生じる違和感を許容できるかどうか,これがAクラスを選ぶ決め手になるのは間違いないところでしょう。この床の高さにはきちんとした理由があるのですが,それを知ったところで現実の製品の魅力が高まるわけではありません。コンセプトに込めた先進性も合理性も経済性も,結果に結びつかなければ評価されないのが工業製品の怖さなのかもしれません。
メルセデスベンツA160 △ この価格ならトラヴィックが……
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定番の実力
ダイムラーベンツという社名自体,自動車をほぼ同時期に発明したといわれるダイムラーとベンツの名前をくっつけたものです。メルセデスというのはダイムラーの有力ディーラー経営者の娘の名前で,自分のところで販売しているダイムラー車の愛称として用いたのがはじまりといわれています。
なお,メルセデスベンツの輸入元はダイムラークライスラー日本で,日本での販売はヤナセグループとシュテルングループの両方が担当しています。
今回とりあげるのは,ベンツの代表的な量販ブランドである「Cクラス」のワゴンです。車両本体価格は415万円〜630万円と幅広いですが,その中で最も安い「C180コンプレッサーステーションワゴン」を素材に「定番ブランドの実力」をはかることにします。
運転席に座ってすぐに気がつくのは,ハンドルがずいぶん左に寄っていることです(中写真)。おそらく慣れが解決するのでしょうが,最初は体を常にひねっているような違和感がありました。
メーターは針の露出部分が少ないタイプです(右写真)。真ん中に大きな液晶パネルがあり,普段はトリップ・積算距離・時刻・外気温・シフト位置を表示していますが,ハンドルについているスイッチの切り換えで平均燃費や平均速度,オーディオ情報などを表示させることもできます。また,水温計も必要な場合にここに表示させる仕組みになっています。ですので,針の付いている計器は3つしかありません。
ヘッドレストは必要な時にだけ起こせるようになっていて,視界を遮りにくいようになっています(左中写真)。高さは十分に確保されています(右中写真)。左右のシートベルトアンカーがきちんと調整式になっているのも「お約束」ですね(左中写真の緑で囲んだ部分)。また,シートベルトの上体へのかかり方も問題ありません(右写真)。ちなみに,シートバックはリクライニングしませんので,問題が出ることはないでしょう。
後席シートバックは2:1分割になっています。運転席側が「1」になっているのは左ハンドル仕様そのままで,ザフィーラと同じですね。シートバックはそのままでも倒せますし,座面を引き起こしてフラットにすることもできます(右写真)。面白いのは,このときトノカバーとネットも一緒にくっついて倒れることです。この状態で前席直後にネットを装着することができるというメリットがあるわけですが,何よりもありがたいのはトノカバーを収納するスペースに困らないということです。こういうやり方があったのかと感心してしまいました。なお,アームレスト部分はなぜか鉄板でふさがれています(右写真の丸で囲んだ部分)。
試乗もしてみました。あまり印象に残らなかったというのが正直なところです。特に静かなわけでもないが,余計な音がするわけでもなく,特にパワフルでもないが,遅さを感じることもなく,キビキビ向きを変えるわけでもないが,動きに重さを感じるわけでもなく,といった感じです。こういう車は評価が難しいかもしれません。特に驚くようなところがないかわり,特に気になるところもないからです。もしかすると恐るべきバランスの上に成り立っている車なのかもしれませんし,ただの凡作なのかもしれません。この車の本当の価値を知るには,しばらくつきあってみる必要があるだろうと思いました。
長くつきあわないとよくわからない部分はともかく,当サイトが一貫して重視している「本当の」使い勝手に関しては非常に高い評価を与えられると思います。高級仕様の価値はよくわかりませんが,少なくともこのグレードに関してはブランドの価値は伊達ではないと結論づけてもいいのではないでしょうか。
メルセデスベンツC180コンプレッサーステーションワゴン ◎ とりあえずこのグレードなら納得
輸入自動車の代名詞的存在としてよく知られているブランドがメルセデスベンツ,通称「ベンツ」です。もともと製造していたのはドイツのダイムラーベンツ社ですが,98年にアメリカのクライスラー社と合併して現在ではダイムラークライスラー社製ということになっています。